競馬場でよくみかける常連おやじの事が愛おしくてたまらない
そんな気持ちになっています。競馬場やウィンズに行くと、必ずや見かける常連おやじ軍団。どう見ても、僕たちの厚生年金がオヤジ経由でJRAに流れているようにしか見えない。
先日も、複勝コロガシ企画の馬券購入のために近所のウィンズに行くと、例によって常連おやじ軍団が、いつもと同じテーブル席を占拠し、まるでココは俺たちの席だといわんばかりの我が物顔で居座っている。
僕はといえば、端のほうの無料の席に座り、スマホで静かに競馬情報をみていた。
すると、なにやらテーブル席のほうから常連おやじ軍団の会話が聞こえてくる。
オヤジ1「横典は朝イチが狙い目なんだよ」
オヤジ2「年寄りは朝につよいからな!」
一同「アハハハハハ、ウァハハハ」
なにを根拠のない話をしているんだ。こういうオヤジたちがサイン馬券とか、意味わからない予想を信じちゃっているんだよなあ。振り込め詐欺にも引っかかるわけだあ。
と思いながら、僕は自分の予想に精を出していた。しばらくすると場内アナウンスから「東京第1レースの払戻は 単勝4番 480円~」と聞こえてくる。「ん、ん~!4番って横山の騎乗馬じゃね!?マジかよ!!!!年寄りは朝に強いのか、そうなのか?さっきの戯言はマジな情報?うぇ~~~い!」いやいや、騙されちゃイカン。こんなんは、たまたま、偶然に過ぎないよね。そう自分に言い聞かせる僕。
でも、おやじ軍団の会話が気になってもいた。
オヤジ1「5レースは柴山できまりだよ~。離婚してから良くなったよな~」
オヤジ2「たしか雄一は今日誕生日だったよな。キマリだな」
なに~!!離婚してから成績が良くなった!今日誕生日!!?
なんで、そんなことしっているんだい?このオヤジたちはいったいどのくらいの競馬界の裏事情に精通しているのだろう。
このデジタル全盛期にスマホも使っていないオヤジたちが何故だか情報通だ。デジタル世代の僕たちこそが情報の優位性を持っていると確信していたのに、アナログ世代の情報速度はデジタルの通信速度を凌駕しているというのか・・・。
それを裏付けるかのように、東京第5レースの柴山騎手は2着(5番人気)。
口づてに伝わる情報。それは決してネットの表社会では見ることのできないレアな情報。
その情報を入手する術を持っているというのか、こんなド田舎のウィンズにいるオヤジたちが!!
すごい、すごすぎる!これは、もうオヤジたちの会話から盗めるだけ情報を盗むしかない!
オヤジ1「今日勝ったら〇〇ちゃんの店で祝勝会だな~」
オヤジ2「まけたら、かあちゃんのまずいメシで反省会かぁ~」
一同「わははははh」
そんな情報はどうでもいいから!次のレースの情報をくれー!もう僕の耳はオヤジたちの会話にくぎ付けだ。
オヤジ1「最近さぁ、山ちゃん馬券買いに来ないと思ったらガンが見つかってさぁ。ステージ3だってよ」
オヤジ2「寂しくなるねぇ~。俺もいつまで競馬やってられっかわかんねけど、当たった外れた~って騒いでられるうちが華だよなあ」
なんか、しんみりしてきちゃったぞい。感情移入しちゃっている僕は、山ちゃんの回復を願わずにはいられない。
オヤジ1「山ちゃんが迷ったら戸崎買っとけって言ってたから、俺、戸崎で流すわ」
オヤジ2「んだ、おれも戸崎だと思っていた」
なにィ~!戸崎だと!ここで競馬界の裏事情に精通しているオヤジたちが、山ちゃんの格言で馬券購入を決めるのか。山ちゃんとは、きっとただ者ではないのだろう。そう、いうなれば熟練手練れの馬券師なのだろう。どれどれ、戸崎の馬は・・・。
なにィ~7番人気ですよーっ。いいんすか、コレ、この馬良いんすか?休み明けで馬体重12㎏も増えてるんですけど・・・。
いや、さすがにこれはないでしょう!
ないない!
って来るんかい!!!!
7番人気で2着。1着は4番人気のウチパク。南関コンビのワンツーでキマリ。馬連で流したオヤジは見事的中したようだ。きっと山ちゃんに見舞いの一つでも買ってあげるんだろうな。
僕は今まで競馬は情報戦だと信じていた。そう、それはまさにData is all of me。データが僕の全てだった。勝負を左右するのは如何に良質な情報を沢山知りえるか、そしてその情報を正しく分析することこそが競馬の勝率や回収率を高めるものだと、そう固く信じて疑わなかった。
しかし、今日ここにきて、片田舎のウィンズで、僕の考えを根底から覆す、驚異の競馬理論に出会ってしまったのだ。「年配ジョッキーは朝が買い」「迷ったら戸崎 by山ちゃん」←これは南関時代の格言な気もするが・・・。
そうなのだ、情報革命やAIがもたらすイノベーションやデータ分析に基づく根拠も、このおやじ達のまえでは何の意味も成さないのだ。
無力。
そう、僕はいま無力感でいっぱいだ。
そんな無力な僕は、もちろんフェブラリーステークスの複勝コロガシもあえなく惨敗。
来週あたりに山ちゃんのお見舞いにでもいこうかなあ~。
願わくば、僕もおやじ軍団に入会させてほしい。
できれば、競馬についてワンカップでも飲みながら熱く語り合いたい。
あんなに毛嫌いしていた、競馬場の常連おやじ達。
そう、ぼくは、今ではオヤジたちが愛おしくてたまらない。
全国の競馬場にいるオヤジたちに乾杯!!!